旅に、罪悪感を積んでいた。
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旅行の準備は、もう終わっていた。
目的地は宮崎。
移動手段は、さんふらわあ。
同行するのは、私たち家族3人。
そして義父、義母、義姉、姪。
7人での家族旅行だった。
息子と姪は中学生。
普段とは違う時間を、家族みんなで楽しみにしていた。
そのはずだった。
出発直前。
熊本地震が起きた。
テレビに映る光景。
崩れた家。
避難所で過ごす人たち。
繰り返される余震のニュース。
旅行の荷物を準備しながら、何度も手が止まった。
「こんな時に旅行へ行っていいのだろうか。」
誰かに言われたわけではない。
自分の中から出てきた言葉だった。
家族で何度も話した。
そして私たちは、予定どおり出発した。
港へ着く。
平日だった。
それでも夏休みのさんふらわあは満員だった。
家族連れ。
学生。
夫婦。
それぞれが、それぞれの夏休みを乗せていた。
船内には、旅を楽しみにする空気があった。
その一方で、スマートフォンを見る人もいた。
熊本地震のニュース。
余震の情報。
被害の状況。
楽しみにしていた旅。
胸に残る不安。
その二つを抱えたまま、船は静かに港を離れた。
デッキへ出る。
海は驚くほど穏やかだった。
中学生だった息子と姪は、船内を歩いたり、デッキから海を眺めたりしていた。
初めてのさんふらわあ。
普段とは違う時間。
その姿を見守る義父と義母。
「船旅もいいものだね。」
そんな声が聞こえた。
その光景は、あまりにも普通だった。
だからこそ、忘れられなかった。
宮崎では、高千穂へ向かった。
家族みんなが楽しみにしていた場所だった。
美しい渓谷。
流れる川。
写真で見ていた景色。
でも、川へ降りることはできなかった。
熊本地震による土砂崩れ。
安全確保のため、遊歩道は閉鎖されていた。
目の前には、美しい景色がある。
でも、その先へ続く道は閉ざされていた。
息子と姪は少し残念そうだった。
それでも、
「また来よう。」
そう言って、その場所を後にした。
夜。
部屋のテレビから流れるニュース。
余震。
避難生活。
救助活動。
旅の途中でも、その音だけは消えなかった。
そんな中で、宮崎で出会った人から言われた言葉がある。
食事をした店で。
宿で。
訪れた場所で。
「来てくださって、本当にありがとうございます。」
その言葉を聞いた時、すぐには返事ができなかった。
ありがとうと言うのは、
こちらの方だと思っていたから。
でも、返ってきた言葉は、
「来てくれてありがとう。」
だった。
あの日、さんふらわあに積み込んだものは、
旅行の荷物だけではなかった。
「こんな時に楽しんでいいのか。」
そんな迷いも、一緒に乗せていた。
今でも災害のニュースを見るたび思い出す。
満員だった船。
デッキから見た穏やかな海。
中学生だった息子と姪の姿。
そして、
「来てくれてありがとう。」
という言葉。
旅に、罪悪感を積んでいた。
あの日運んでいたものは、
荷物だけではなかった。
あの迷いも。
あの日デッキから見た穏やかな海も。
あの時聞いた、
「来てくれてありがとう。」
という言葉も。
今も静かに残っている。



災害が起きた直後、「楽しんで良いのだろうか」と罪悪感を抱えてしまう葛藤にすごく納得しました。葛藤を抱えながらも足を運び、現地の方から「来てくれてありがとう」と声をかけられた体験は、現地に赴くこと自体が誰かの支えや復興の一助になり得るのだと教えられます。
ありがとう🤩