余白の返事
先日、「ファンをつくる」という記事を書いた。
フォロワーを増やす話ではない。
誰か一人に、「また読みに来よう」と思ってもらえる関係について書いた記事だった。
その夜、一通のDMが届いた。
「Marginさんの本、購入させてもらいました。」
Kindleに慣れていなくて購入方法に少し迷ったこと。
Unlimitedに登録するのも少し不安だったこと。
それでも無事に購入できて、少しずつ読み進めていること。
専門用語は難しいけれど、最後まで読んだら感想を送ります、と書かれていた。
私は、そのDMを何度も読み返した。
正直に言えば、「本を書きました」と言いながら、心のどこかでは知り合いしか読まないと思っていた。
だから説明も最低限だったし、読みにくいところも、そのまま残した。
そんな本を、自分で探し、購入し、自分の時間を使って読んでくれる人がいる。
照れくさいくらいうれしかった。
もしかすると、あれがファンが生まれる瞬間だったのかもしれない。
私は返信で、
「第二作もUnlimitedなら無料で読めます。」
と伝えた。
第二作は、第一作とは少し毛色が違う。
私自身が異世界へ転生する、チートもないスピンオフのような物語だ。
すると返ってきた言葉は、思ってもいなかった方向から飛んできた。
「じゃあ、ファン1号になりますね?恐縮です😊」
思わず、私ははにかんでしまった。
でも、本当に心が動いたのは、そのあとだった。
「第一作で出てくる彼女が主人公の、アンサーメッセージみたいな本が出たりして。」
私は、その一文を何度も読み返した。
物語の途中で、彼女と主人公は別れる。
そこまでは、もう読んでいる。
だから、その人は続きを求めたわけではなかった。
物語の中で語られなかった、もう一人の人生を見つけたのだ。
気づけば私は、プロットではなく、彼女の人生を年表にしていた。
出会う前。
別れたあと。
誰にも語られなかった時間。
主人公の知らない彼女の一日を想像し、その空白に少しずつ出来事が並び始めていた。
第一章はどこから始めるべきだろう。
別れたあとの朝だろうか。
それとも、主人公と出会う前の、まだ何者でもなかった彼女からだろうか。
数分前まで、この世に存在しなかった一冊だった。
その本は、私が思いついたものではない。
一人の読者が、私の物語の余白で見つけてくれた一冊だった。
結局、その夜はメモを開かなかった。
まだ、その物語は私が書くものではないと思ったからだ。
私は、本を書き終えたつもりだった。
でも読者は、読み終えていなかった。
私が書かなかった時間を読み、
私が語らなかった人生を想像し、
私が残した余白を歩いていた。
私はまだ、その本を書いていない。
でも、一人の読者は、もう読んでいた。


この記事はNoa(のあ)さんに捧げる。
Marginさん
こんにちは。
これ、私やん……と思いながら読みました(;'∀')
素敵に書いてくださってありがとうございます!