昨今、
若者を取り巻くニュースを見ていると、
少し奇妙な気分になる。
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初任給30万円。
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新卒争奪戦。
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売り手市場。
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人手不足。
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企業は若者を欲しがっている。
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まるで、
若者にとって最高の時代が来たかのように見える。
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しかし同じ日に、
こんなニュースも流れてくる。
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AIによる業務代替。
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ホワイトカラー削減。
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新卒採用縮小。
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若年層の就職難。
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一体どちらが本当なのだろう。
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若者は恵まれているのか。
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それとも不安定な時代を生きているのか。
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私は、
その両方だと思う。
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今の日本では少子化が進んでいる。
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若者は減り続けている。
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企業は人を採れない。
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だから初任給が上がる。
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待遇も改善される。
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数字だけ見れば、
若者に追い風が吹いている。
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しかし私は、
その追い風が永遠に続くとは思っていない。
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むしろ、
今吹いている風は、
嵐の前の静けさかもしれない。
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海外を見ると、
少し違う景色が見えてくる。
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イギリスでは、
若年層の無業者増加が問題視されている。
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アメリカでは、
AIによる雇用不安が若者の間で急速に広がっている。
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インドでは、
高学歴であっても安定した仕事に就けない若者が増えている。
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国は違う。
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文化も違う。
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経済状況も違う。
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それでも共通しているものがある。
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AIである。
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これまで新人が担当していた仕事。
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資料作成。
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議事録作成。
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データ整理。
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文章作成。
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調査業務。
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そうした仕事を、
AIは数分で終わらせる。
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企業から見れば合理化だ。
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コスト削減だ。
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生産性向上だ。
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だが、
若者の側から見ると話は変わる。
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入口が消えていく。
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私はここに、
本当の問題がある気がしている。
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仕事がなくなることではない。
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仕事を覚える場所がなくなることだ。
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新人は最初から一人前ではない。
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失敗する。
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教わる。
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怒られる。
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悩む。
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覚える。
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そうやって成長する。
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だが社会全体が効率を求め始めると、
その「成長するための余白」が消えていく。
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失敗する機会がなくなる。
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教わる機会がなくなる。
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経験を積む機会がなくなる。
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AIは優秀だ。
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文句も言わない。
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疲れもしない。
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休みも取らない。
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しかし、
AIは新人を育てない。
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未来のベテランも育てない。
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ここに、
多くの人がまだ気付いていない気がする。
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今、
日本では人手不足が続いている。
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だから大丈夫だと言われる。
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確かに今はそうだろう。
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だが10年後はどうだろう。
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AI活用が進む。
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事務職が減る。
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中間管理業務が減る。
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報告書作成が減る。
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会議資料作成が減る。
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企業は次第に気付き始める。
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「あれ?」
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「新卒をこれだけ採る必要があるのだろうか」
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人手不足だったはずなのに、
AIがその穴を埋め始める。
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すると、
これまで売り手市場だった若者は、
突然競争の側へ回るかもしれない。
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私は、
日本でも同じ現象が起きると思っている。
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ただし少し遅れて。
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日本は変化が遅い。
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技術導入も遅い。
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だから危機感も遅れる。
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しかし、
遅いことと、
起きないことは違う。
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海外で起きていることは、
数年後の日本の予告編かもしれない。
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だから私は、
AIに勝つことが重要だとは思わない。
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AIと同じ土俵に立たないことの方が大切だと思う。
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人を信頼すること。
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人から信頼されること。
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責任を引き受けること。
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人を育てること。
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人の感情を理解すること。
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人と人をつなぐこと。
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そうした仕事は、
まだ簡単には代替されない。
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少なくとも今は。
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私は医療現場で働いている。
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検査値はAIが読むようになるだろう。
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画像診断も進歩するだろう。
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多くの業務は効率化される。
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それでも、
患者や家族が沈黙した時、
その沈黙の意味を理解する仕事は、
最後まで人間に残る気がしている。
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若者は今、
高い初任給を手にしている。
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しかし同時に、
誰も経験したことのない未来へ向かっている。
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恵まれているように見える。
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だが実際には、
AIと少子化という巨大な潮流の間で揺れている世代なのかもしれない。
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そして本当に観察すべきなのは、
AIではない。
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その変化の中で、
人間が何を仕事と呼び続けるのか。
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何に価値を感じ続けるのか。
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何を人間にしかできないと考えるのか。
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そちらの方だと思う。
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AIの進化は、
技術の問題ではない。
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人間の価値を問い直す時代の始まりなのかもしれない。
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もし10年後、
あなたの仕事の半分をAIができるようになったとして、
それでも残る仕事は何だろう。
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私はその問いこそ、
これからの時代を生きる私たち全員に向けられている気がしている。

「仕事がなくなることではなく、仕事を覚える場所がなくなることだ」という、効率化がもたらす若者の成長機会の損失への指摘に深くハッとさせられました。
新人が資料作成やデータ整理といった泥臭い実務を通じて失敗し、教わりながらベテランへと育っていく「ステップ」そのものがAIによってスキップされてしまう。この目先の人手不足の裏で静かに進む「育成のインフラ崩壊」という視点は、これからの組織や社会が直視すべき極めて重大な論点だと感じます。