「少し時間いいですか?」
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旅行明けの出勤。
検査室は、いつも通り動いていた。
結果を確認し、
電話に対応し、
次の業務へ向かう。
そんな日常の途中で、
2年目の職員が声をかけてきた。
「少し時間いいですか?」
いつもの相談だと思った。
でも、少し違った。
表情が硬く、
涙をこらえているように見えた。
だから、いつものように少し空気を変えようと思った。
「誰かにセクハラされた?
それともパワハラ?」
冗談交じりに聞いた。
冗談だった。
でも、
若い職員が涙を流して相談に来る時、
そこには、
何か理由があることだけは分かっていた。
返ってきた言葉は、
「退職したいです」
だった。
彼女には、
昔から希望していた分野があった。
その仕事がしたくて、
この道を選んだ。
上長にも希望は伝えていた。
でも、
その声が届く前に、
彼女は別の場所を選んだ。
悩んだ末に、
別の専門病院へ行くことを決めたという。
正直に言えば、
残ってほしい気持ちはあった。
今いる場所でも、
挑戦できる可能性はあると思った。
部署異動という道も、
時間をかけるという選択肢もあった。
でも、
それは本当に彼女のためなのか。
それとも、
自分たちが人を失いたくないだけなのか。
そう考えた。
だから私は、
引き止めることより、
彼女自身が選んだ道を応援することにした。
新しい場所で、
ずっとやりたかった仕事に近づけるなら、
それはきっと、
前に進むための決断なのだと思う。
ただ、一つだけ心に残った。
なぜ彼女は、
辞めると決めた後に、
初めて本当の気持ちを話してくれたのか。
人は、
退職を決めた時に初めて、
本音を語れることがある。
本当は、
もっと早く聞けたのかもしれない。
もっと早く、
「何がしたいのか」
「何に悩んでいるのか」
そんな話ができていたら、
違う未来もあったのかもしれない。
検査には、
異常値を知らせる基準がある。
でも、
人の気持ちには、
明確な基準値がない。
限界を超えてからでは、
元に戻せないこともある。
今回の出来事は、
一人の職員が辞める話ではなかった。
彼女が辞めることを聞いた日、
私が考えていたのは、
「なぜ辞めるのか」
ではなかった。
「なぜ、
辞めると決める前に聞けなかったのか」
その問いは、
今も私の中に残っている。
「少し時間いいですか?」
その一言の聞こえ方が、
あの日から変わった。



夫の会社でまさに同じことがあったばかりで…グサグサ刺さりました。
大切なのは
社員の方からその言葉が出た時ではなく、その“前”なんですが
さらにその人の退職への気持ちが芽生えてしまう小さな変化に気づけなかったのか。
そして、その段階で話してもらえる関係でいたのかどうか…
夫婦で話し合ったことを思い出しました😞
団長、お疲れさまです。
前職で、管理職あたりだったので同じ境遇がおおくありまして。
僕の場合は逆で、「辞めようか迷っている」という相談だったら、「辞めなさいっ!!」と言い続けてきました。僕自身が、職場に疑問しかなかったので。
職場に残っても、何の学びもないだろうって思っていたのでしょうね。
でも、団長は残って欲しいって想いがあったのであれば、少なくとも、職の環境は悪くなかったのかなぁって感じました。
医療のことは、詳しくないので一概には言えませんが、きっと大変なお仕事なんだろうと思います。
団長も、ご無理なさらず🙇♂️✨